- ダブル受験をしないと損?
- どちらの資格から挑戦するべき?
- ダブル受験のメリットとデメリットを知りたい
マンション管理士と管理業務主任者は、どちらもマンション管理に関する国家資格です。管理業務主任者試験とマンション管理士試験は出題範囲が重複しているのでダブル受験を目指す受験者が多くいます。
しかし、2つの資格は性格や目的が大きく異なります。両試験の特徴を理解せずにダブル受験を目指すと間違いなく「どちらの試験も不合格になってしまった…」という結果に陥ってしまいます。
私は、3度目の管理業務主任者試験で合格することができました。そして、その翌年にマンション管理士試験に合格し念願のダブルライセンスを取得しました。今考えると当時に欲張ってダブル受験を目指さなくて本当に良かったと思っています。
結論は、「ダブルライセンスを目指すなら、まずは管理業務主任者試験から挑戦するべき」です。
この記事では管理業務主任者試験とマンション管理士試験の「ダブル受験がおすすめできない理由」を解説します。
この記事を参考にすれば、「両方の試験に落ちてしまった…」と失敗することはありません。
試験は年に1回だけです。まずは確実に管理業務主任者試験に合格しましょう!
ダブルライセンスを持っていても意味がない可能性がある
マンション管理士の仕事は資格がなくても同様の仕事ができる
マンション管理士は、名称独占資格です。つまり資格を持っていないと「マンション管理士」を名乗ることはできません。しかし、資格がなくても誰でもマンション管理士の業務を行うことが出来てしまいます。
一方、管理業務主任者は、マンション管理適正化法で定められた業務を行うことができる唯一の資格です 。この資格を持っていれば、マンション管理会社で重宝されますし、将来的に独立を視野に入れることも可能になります。
ダブルライセンスを持っていても、自分の希望するキャリアプランに沿えない可能性があるので、 まずは確実に管理業務主任者試験に合格することが重要です。
現時点で本当にマンション管理士の資格が必要なのかを考えてみましょう。
管理業務主任者とマンション管理士の違い
マンション管理士と管理業務主任者の違いは、対応する相手が異なるという点です。
マンション管理士は、管理組合側の立場で、マンションの管理や運営に関する助言や指導を行います。マンション管理士は、管理組合の顧問やコンサルタントとして活躍します。
管理業務主任者は管理会社の立場
管理業務主任者は、管理会社側の立場で、マンションの管理受託契約に関する説明や報告を行います。管理業務主任者は、管理会社のマネジメントや営業として活躍します。
マンション管理士は管理組合のコンサルティング
マンション管理士は、名称独占資格です。つまり、資格を持っていなくても誰でも同様の業務を行うことができます。その代わりマンション管理士と名乗ることはできません。
管理業務主任者は業務独占資格。資格を持っていなければ業務を行うことはできませんし、法律で定められた一定数以上の設置義務もあります。しかし、マンション管理士には業務独占業務ではありません。つまり、管理業務主任者はマンション管理士の仕事は出来るけどその逆は出来ないという事です。
求人を見てもマンション管理会社で必要とされているのは管理業務主任者のほうです。
>>マンション管理業以外から見た管理業務主任者の必要性を徹底解説!
マンション管理士試験は超難関資格|合格者は5点免除者が多い
マンション管理士の合格率
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
平成27年(2015) | 14,092名 | 1,158名 | 8.2% |
平成28年(2016) | 13,737名 | 1,101名 | 8.0% |
平成29年(2017) | 13,037名 | 1,168名 | 9.0% |
平成30年(2018) | 12,389名 | 975名 | 7.9% |
令和元年(2019) | 12,021名 | 991名 | 8.2% |
令和2年(2020) | 12,198名 | 1,045名 | 8.6% |
令和3年(2021) | 12,520名 | 1,238名 | 9.9% |
令和4年(2022) | 12,209名 | 1,402名 | 11.5% |
マンション管理士は合格率が毎年8%前後を推移している超難関資格です。2022年度の合格率は、マンション管理士が11.5%、管理業務主任者が18.9%でした 。両方の資格を同時に取得することは、非常に困難なことです。
2022年4月からマンション管理計画認定制度が開始されたことが合格者数増加の一因なのか、例年と比べてマンション管理士の合格率は多少高くなっていますが、それでも超難関資格であることは変わりません。
資格名 | 必要な勉強時間の目安 |
マンション管理士 | 500~700時間 |
宅建士 | 300~400時間 |
管理業務主任者 | 300時間 |
賃貸不動産経営管理士 | 100時間 |
目安勉強時間は約600時間とされていています。不動産4冠資格の中で比べても必要な勉強時間は圧倒的に多く、管理業務主任者の2倍の勉強量が必要になります。この点から簡単に合格できる資格ではないことがわかります。
あくまでも目安勉強時間なので、予想以上に勉強時間が必要になることも考えておくべきです。
まずは管業で土台を作ってからマン管に挑戦する方が得策です。
マンション管理士試験は5点免除の受験者が多い
年度 | 合格点 |
平成27年 (2015) | 38点 |
平成28年 (2016) | 35点 |
平成29年 (2017) | 36点 |
平成30年 (2018) | 38点 |
令和元年 (2019) | 37点 |
令和2年 (2020) | 36点 |
令和3年 (2021) | 38点 |
令和4年 (2022年) | 40点 |
マンション管理士試験の受験者の中には既に基本知識を持った受験者や5点免除者が多くいるので合格点が非常に高い傾向にあります。
難易度が高いことに加えて合格ラインは38点です。初心者にとってはかなり難しい試験だと言えます。まずは管理業務主任者試験に合格して5点免除者になってからマンション管理士に挑戦する方が間違いなく合格できるチャンスが高くなります。
受験者の多くは一定の知識を持った5点免除者。初心者にとってはかなり不利な試験です。
出題範囲は重複しているが出題の【目線】が違う
管業とマン管の試験の特徴と違い
両試験の試験範囲は重複している箇所が多いのでダブルライセンスを目指しやすい資格です。しかし、試験の出題傾向は違って「それぞれの立場からの目線」から問われる問題となっているのでそれぞれの試験の違いを正確に理解する必要があります。
ダブルライセンスは目指しやすいけどダブル受験の合格は難しい。
管理業務主任者試験
管理業務主任者の特徴は「管理業者目線」で管理組合への指導やマンションの管理業務
マンション管理士試験
マンション管理士の特徴は「管理組合目線」でマンション管理者に対してのコンサルティング
試験に慣れていない人は両試験の違いに混乱してしまいます。
両試験の日程
資格名 | 試験日 | 曜日 |
マンション管理士 | 毎年11月 | 最終日曜日 |
管理業務主任者 | 毎年12月 | 最初の日曜日 |
マンション管理士と管理業務主任者の試験日は、通常1週間程度しか離れていません。そのため、両方の試験に対応するためには、短期間で大量の知識を覚える必要があります。
両試験の勉強で知識が混乱してしまう危険性も非常に高く、これは精神的にも肉体的にも大きな負担になります。
また、先に難易度が高いマンション管理士試験を受験して「気持ちが切れてしまった」という受験者も少なくありません。
一番恐れていることは両試験に失敗してしまうことです。
>>難しい資格はどっち?管理業務主任者と宅建士の難易度を解説
管理業務主任者試験に合格する方が圧倒的にメリットが大きい
マンション管理の知識を学ぶ機会が多くなる
管理業務主任者試験に合格をすればマンション管理会社で働くことができます。また、試験に合格した後も実務経験や講習を受けたりするのでマンション管理の知識を学べる機会が多くなります。そうした実務経験を積むことで、マンション管理士の試験にも役立つ知識やスキルを身につけることができます 。
管理業務主任者試験に合格することは、マンション管理士試験に合格するためのステップとしても有効です。ダブルライセンスを目指す場合は、まずは管理業務主任者試験に集中することをおすすめします。
まずは管理業務主任者になって知識を増やすことが重要です。
マンション管理士には独占業務がない
マンション管理士は独占業務はなく「名称独占資格」です。資格を持っている人だけがその名称を名乗ることができる資格です。取得ができれば顧客から厚い信頼を得ることが出来るでしょう。
しかし、現時点ではマンション管理士だけができる独占業務はないので管理業務主任試験に合格する方がメリットは大きいと言えます。
頑張って資格を取っても自分の希望するキャリアプランに沿えない可能性があります。
転職目的なら管理業務主任者の方が圧倒的に需要が高い
管理業務主任者の独占業務は、以下の4つがあります。
- 管理受託契約書に記名・押印
- 管理受託契約の際の重要事項の説明
- 重要事項説明書に記名・押印
- 管理組合に対して管理事務の報告
管理業務主任者はマンション管理会社には欠かせない存在です。転職を視野に入れているのであれば、管理業務主任者を取得する方がメリットはかなり大きいです。また、管理会社に転職して実務経験を積むことで、マンション管理士の試験に役立つ知識やスキルを身につけることができます 。
転職には管理業務主任者の需要が圧倒的に多いです。
ダブル受験をおすすめできる人・できない人
管理業務主任者試験とマンション管理士試験は、内容が一部重なっているため、ダブル受験を目指す人も多いです。しかし、ダブル受験は本当に効率的な勉強法なのでしょうか?
ダブル受験をおすすめできる人とおすすめできない人の特徴を見ていきましょう。
ダブル受験をおすすめできる人
ダブル受験をおすすめできる人は、以下のような特徴を持っている人です。
- 勉強時間を十分に確保できる人
- 効率よく勉強ができる人
勉強時間を十分に確保できる人
管理業務主任者試験とマンション管理士試験に合格するためには、各科目の基礎知識や応用力を身につける必要があります。そのため、一つの試験だけでも十分な時間と労力がかかります。ダブル受験をする場合は、さらに多くの時間と労力が必要になります。
マンション管理士の目安勉強時間は500~700時間です。
勉強時間を十分に確保できる人とは、以下のような人です。
- 学生、フリーター、無職の方など時間に余裕がある人
- 会社員で残業がなく勉強時間が確保できる人
- 育児や家事などの負担が少ない人
- 試験までに十分な期間がある人
時間に余裕がある人は、ダブル受験をすることで、二つの資格を同時に取得するチャンスがあります。しかし、時間に余裕がない人は、ダブル受験をすることで、どちらの試験も不十分な準備になってしまう可能性があります。その場合は、一つの試験に絞って勉強することをおすすめします。
効率よく勉強ができる人
管理業務主任者試験とマンション管理士試験は、内容が一部重なっているため、同じように勉強すればいいと思われがちです。しかし、実際には、両方の試験では出題傾向や難易度が異なります。例えば、管理業務主任者試験では、建物の構造や設備に関する問題が多く出題されますが、マンション管理士試験では、マンションの管理組合や管理規約に関する問題が多く出題されます。
試験範囲は重なっているけど試験内容が違います。
効率よく勉強ができる人とは、以下のような人です。
- 過去問から出題傾向を分析できる人
- 出題されるポイントやキーワードを把握できる人
- 問題の解き方のコツを習得できる人
- 既に基礎知識を習得している人
出題傾向を分析できる人や基礎知識を習得している人は、重複する部分を効率的に勉強できます。しかし、そうではない人がダブル受験をすると、必要な部分と不要な部分を区別できずに無駄な勉強をしてしまう可能性があります。その場合は、一つの試験に特化して勉強する方が効果的です。
ダブル受験をおすすめできない人
ダブル受験をおすすめできない人は、以下のような特徴を持っている人です。
- 時間に余裕がない人
- 出題傾向を分析できない人
時間に余裕がない人
時間に余裕がない人とは、以下のような人です。
- 仕事が忙しく十分な時間を確保できない人
- 育児や家事などの負担が多い人
- 資格の勉強以外にもやりたいことがある人
- 他にも優先するべきスケジュールがある人
- 試験までに十分な期間がない人
時間に余裕がない人は、ダブル受験をすることで、どちらの試験も不十分な準備になってしまいます。その場合、両試験とも不合格になってしまう可能性があります。時間の確保が難しい人は一つの試験に絞って勉強することをおすすめします。
自分が確保できる勉強時間を考えましょう。
出題傾向を分析できない人
出題傾向を分析できない人とは、以下のような人です。
- 過去問から出題傾向を分析できない人
- 重要なポイントやキーワードを把握することが苦手な人
- 昔からテストや試験が苦手な人
- 頑張っているのになかなか得点が伸びない人
出題傾向を分析できない人は、必要な部分と不要な部分を区別できずに無駄な勉強をしてしまう可能性があります。試験では引っかけ問題も多いので、勉強が苦手な人は一つの試験に特化して勉強することをおすすめします。
出題傾向が少ない問題を勉強しないように注意しましょう。
>>管理業務主任者試験の受験経験者が語る!合格するためにやってよかったこと
まずは管理業務主任者試験に合格することが重要
管理業務主任者とマンション管理士は、対応する相手や立場が異なる資格です。試験範囲は重複している箇所が多いのでダブルライセンスは目指しやすい資格だと言えるでしょう。
しかし、ダブル受験で一度にそれぞれの資格を目指すとなると、試験内容の違い・合格率の違い・試験日のスケージュールなどから試験に失敗してしまう可能性が非常に高くなります。
私は、宅建士の資格を保有していましたが管理業務主任者試験に2度失敗してしまいました。
正直、管理業務主任者試験を甘く考えていました。
管理業務主任者試験も100人受験したら80人が落ちてしまう難関資格です。もし、管理業務主任試験を受験するついでにマンション管理士試験を目指そうとしているのであれば絶対におすすめはできません。
軽い気持ちでマンション管理士に挑戦すると間違いなく「両方の試験で失敗してしまった」という結果に陥ります。
特に勉強時間の確保が難しい人は、ダブル受験をすることで、どちらの試験も不十分な準備になってしまいます。時間の確保が難しい人は一つの試験に絞って勉強しましょう。
受験者の中には一発でダブル合格をする強者もいますが、試験は年に1回の国家資格です。両試験に落ちてしまうような最悪な結果に陥らないよう注意しましょう。
この記事のポイント
・マンション管理士は合格率8%の超難関資格
・出題範囲は重複しているけど出題される目線が違う
・ダブル受験は両方の試験に失敗してしまう可能性が高い
・ダブルライセンスを目指すならまずは5点免除者になるべき